DPC新機能係数に関する意見の公表

DPCを活用した評価事業(ベンチマーク)企画運営委員会は「救急」に関する意見を発表致しましたので、その全文を掲載致します。


2009年11月20日

救急医療について

VHJ機構
DPCを活用した評価事業企画運営委員会

次期改定までの導入を検討するため、更にデータ分析や追加の調査を
実施すべきとされた項目のうち、救急医療についての意見

中医協でのDPC新機能評価係数の検討において、救急車患者搬送数、救急医療の提供体制、医師等の配置状況、複数の診療科体制等に機能の差異が認められたとの報道がなされております。私達はこれらの指標をDPC機能係数として利用することに関し、救急医療現場を支える民間病院グループの立場から、いくつかの問題を指摘して意見を述べたいと思っております。

 

  1. 現在、救急医療における問題点として、一部の二次救急医療機関への患者の集中があります。このことにより、救急医療体制の機能維持が心配されています。また、このような状況に合わせて各医療機関もさまざまな形態での対応を余儀なくされております。従来の二次救急医療機関が、救命センター並みの多発外傷などの重症患者に対応せざるを得ないことも少なくありません。一部の医療機関では包括したERシステムを構築している医療機関もあります。機能に関係なく、軽症患者を忌避して重症患者のみを扱う病院もあるそうです。従来型の、初期救急、二次救急、三次救急といった区別では対応できない多種多様な提供体制が構築され今も模索されています。現場の医療を混乱させないために、医療機関の提供体制・役割分担の実際を十分配慮した、明示的な評価システムを確立されるよう期待いたします。
  2. 救急医療を実施するためには様々な需要に対応できる体制をとらなければならないと考えます。「急患」はすべて断らないことを実現する医療機関では、ゆとりある医師等の配置・入院病床の確保が必須です。これが不採算部門とならないよう、診療報酬上の優遇措置がなされるべきであると考えます。特に、地域のニーズや事情から、その体制が求められる場合では当然のことと思われます。このような制度が診療拒否のない体制整備につなげられると考えます。DPC機能係数ではなく、救急医療提供体制の充実という観点から評価することをご検討願えないでしょうか。
  3. 「救急患者数」を救急車による搬送のみにするのか、救急外来受診者総数にするのかの一層の検討が必要ではないかと思われます。救急搬送患者に重症者が多い傾向がありますが、受入患者の傾向・重症度・実際に行われる医療内容は医療機関においてかなりばらつきがあります。評価の力点は、受診者数とともに重症度・治療の難易度を評価することが重要ではないかと考えていますがいかがでしょうか。
  4. 今回の特別調査において救急医療での医師の配置状況について、調査対象には臨床研修中の医師(研修医)を含んでいたのか不明確でした。医師配置状況の評価に研修医を含めるべきかどうかは検討する余地があると思われます。また、救急は外来診療で処置されることが多く、現行ではDPCの枠外です。DPC制度内の調整だけではカバーされません。診療報酬全般からの目配りが必要ではないかと考えます。

最後に、診療報酬・DPC制度とは関係が薄いのですが、意見を述べさせていただきます。

救急医療体制の維持が懸念される要因の一つに需要の過多があるように思われます。

救急外来の利用・受診行動に対する患者側のモラルハザードを指摘する専門家が多数おります。一部の診療科・医療機関での患者側の受診行動や医療機関側の診療拒否などが時々報道されております。保険者の立場から問題のある受診行動に関する注意、適切な医療  機関を利用するための啓発に加えて、患者自らのファーストエイドに関する教育システムを確立してくださることを希望いたします。

すでに我が国の医療問題は多方面から論じられています。医師の地域偏在、診療科問題、病院勤務医の処遇問題や絶対的不足などは以前から指摘されております。また、急性期  医療、特に救急医療体制が懸念される事態が出現しています。救急患者の受け入れ拒否 (言葉が悪いのですが、いわゆるタライ回し)が多く報じられるようになり、地域医療や医療体制の機能不全が深刻になっていると指摘されることが多くなりました。このような問題が少しでも減じられるような方向性を目指して検討されることをお願いいたします。

 


 

2009年11月2日

VHJ機構
DPCを活用した評価事業企画運営委員会

新機能評価係数の設定について次期改定での導入が、妥当と考えられた項目に関する意見

1.「DPC病院として正確なデータを提出していることの評価」について

(1)部位不明・詳細不明コードについて

私共の調査によれば、手術症例で部位の記載漏れがある等、単純なミスが少なからず認められました。また、例えば緩和ケアのための転入例では、詳細な患者情報を得ることなく入院が行われ、詳しい情報を得ることを怠っていた例などが多く発見 されました。これらの事例は速やかに改善されなければなりません。

次に例として、呼吸器感染症などでは起因菌が特定されない、あるいは特定されるまでに軽快治癒に至る症例が多くあります。このように、感染症例では不明コードの出現率が高くなっています。臨床現場においては、ICDコードを詳細に付与するまでには至らない事例もあり、やむを得ない場合も多いものと考えられます。

不明コードの多少を評価する場合は臨床の実態を反映した評価基準を設ける工夫も 必要ではないかと思料いたします。なお、正確な患者情報をということから考える と、医療資源病名にとどまらず、入院時併存疾患、入院後発症疾患についても評価 対象とすること検討していただけることを希望いたします。

(2)様式1の非必須項目の記入について

一般に社会基盤の一つとして情報は重要です。医療政策においても医療統計は重要であり、特に疾病統計においては詳細な患者情報が有用であり、患者情報の構築が急務であるように思われます。このためには、情報の収集、精度管理、分析システム、個人情報の保護、活用・提供、データの提供に対するインセンティブ等が解決される必要があるのではないでしょうか。

このような観点から、様式1の項目を見直し、医療政策に資することができ、また学術的な活用ができるものとするため、項目の記入は通年とし、項目数は必要最小限とすること、提供者のデータへのアクセス等の問題を同時に解決することを要望いたします。

以上の条件を整備した上で、正確な情報を提供するインセンティブを与えるための報酬システムを導入することを提案いたします。

2.「複雑性指数による評価」について

複雑性指数については、当該医療機関の各診断群分類の平均在院日数が全DPC対象病院と同じであると仮定した場合の指数ですが、地域性、病院の機能などが考慮されているようには思われません、また、内視鏡手術によって在院日数が短縮されるといったような治療内容(技術)の複雑性評価等が反映されてしかるべきではないかと思料いたします。「複雑性」の意味する内容を詳細に検討されて明確に示していただけることを要望いたします。

3.「診断群分類のカバー率による評価」について

カバー率の定義によれば、この評価は多様な疾患を多く扱う医療機関を評価すること理解いたします。カバー率と病床数の関係を見ると、病床数の多いところでは、カバー率も高くなっています。MDC別ですが、病床数(病院の規模)との関係を見ると、病床数の大小で疾病の構成比率(患者構成)が変化するという傾向は認められませんでした。病床数が多いことによってカバー率が高くなるということであると判断できます。規模の大きい病院は設備等にかかる負担の割合が中小病院のそれよりも大きいとの指摘もありますが、本当でしょうか。

また、専門科に特化した病院や特定の臨床科を重点として地域に貢献している病院の評価が小さく評価される懸念があるように思われます。

さらに、少数の症例を排除して評価することにも診療側の作為が可能となる懸念もあり、再考の余地があるのではないかと思われます。出現率の低い稀少診断群を明示して恣意的な診断群付与を避けることが望ましいのではないでしょうか。

地域における疾病構造や医療機関の分布、住民の要請などによって特定の、或いは 特化した診断群を重視して地域医療に貢献している病院も少なくありません。

この観点に立脚した評価項目を追加する等、検討されることを要望いたします。

参考図PDF
図1-1~2 VHJ機構会員病院DPC対象病床数とカバー率
図2 施設別MDC構成率
図3-1~2 DPC対象病床数とカバー率

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